映画と歩く

映画についてのあれこれを綴る。洋・邦・実写・アニメetc...ジャンルは絞りません

ロンドンゾンビ紀行

ロンドンゾンビ紀行(原題:Cockneys VS Zombies)』

監督:マティアス・ハーネー
製作:ジェームズ・ハリス、マーク・レーン
脚本:ジェームズ・モラン
出演:アラン・フォード、ハリー・トレッダウェイ、アラン・フォード、オナー・ブラックマン、
ミシェル・ライアン、ラスモス・ハーディカー

今回取り上げるのはこの「ロンドンゾンビ紀行
タイトルからしてB級丸出し、隣で嫁も苦笑いの作品なのですがちょっと見逃してはもったいない作品だった。
ぶっちゃけタイトルがくだらなすぎて一周まわって笑えたから借りたんですけど内容はなかなかしっかりしている。

イギリスのゾンビ映画で真っ先に思い浮かべるのは「ショーン・オブ・ザ・デッド
ロンドンゾンビ紀行ショーンに対するリスペクトとオマージュに溢れてる、らしい。カットインの入れ方とか全体的なユルさはかなりショーンっぽい。
まあイギリスでコメディゾンビ映画ってなったらショーンっぽいってなっちゃうね。

開幕は工事現場で遺跡を発見するところからはじまる。
金目のものでもないかと現場の人が中を探っていると死人が動いてボリボリ食べる。ちょうど開始三分でゴアシーン。
そこからハードロックと共にテロップ入りのオープニング。
もう王道すぎる程に王道。そこがスタイリッシュでイギリスっぽい。
ちなみにオープニング楽曲は「The Automatic」の「Monster」なかなか映画にハマッててかっこいいね。

続いて物語の主人公にあたる兄弟二人、兄貴のテリーはちょっと間抜けな薬中みたいで弟のアンディは気弱そうなイケメン。
その二人の祖父であるレイなどが続けて登場。
兄弟は祖父のいる老人ホームに弁当を届ける仕事をしていてレイは老人ホームのリーダー的存在。
その老人ホームが閉鎖されそう、などというあらすじの流れがスムーズに進んでいく。

原題にあるCockneysというのはロンドンの下町っ子というような意味を指すらしく、じいちゃんのレイはかなり口が悪い。
東京でも生粋の江戸っ子は口が悪いというイメージだが下町というのは世界中でそんな感じなんだろうか。

テリーとアンディのマグガイア兄弟に加えて間抜けな強盗デイヴィというやや太めの男と
鍵開けの名人でガタイの良いビッチのマクガイヤ兄弟の従姉妹のケイティ、頭に鉄板が入ってるクレイジー黒人ミッキーという
濃いメンバーを加えて銀行強盗を決行。目的は老人ホームを救うため。働けよ。
イギリスのコメディ映画は大体若者はまともに働いていないイメージがあるがまさにそれ。

銀行強盗はスムーズに成功させるが外に出ると当然のごとく警官に囲まれている。
人質をとって逃げようと外に出ると街はいきなり壊滅状態、ゾンビだらけという状況だ。
デイヴィが「何があった?」という問いに、すかさずケイティが「ゾンビよ」と答えるシーンがあるんだけどもここでスッとああ、俺この映画好きだわって感じになった。
よくある展開だと何だあれは!とか大騒ぎしてしまう。それをこの映画は真正面から「ゾンビよ」だ。
現実の常識がほとんど通用していてゾンビだけ誰も知らないのがそもそも不自然なんだよ。
内臓ビタビタ垂らしながら歩いていて足食べてたり、腸食べてたらそりゃゾンビだよ見りゃ解るだろ!とツッコミを入れずにすむという爽快感。

同時に老人ホームでもコミカルな老人たちが大量のゾンビたちと悪戦苦闘。
この作品で珍しいのはこの老人vsゾンビの構図。
特に歩行器で歩く老人の後ろからゾンビが追いかけてくるシーンが笑いどころなんだけど、
ここまで鈍いゾンビに壊滅させられるロンドンって……。

全体的にはよくまとまっていて、コメディだけどしっかりゾンビものとして出来が良い。
ゴアシーンは少なめながらしっかり作ってるしね。あとエキストラもかなりの人数いるし。
しかしテンポの良さが逆にアクというかコクというかに物足りなさを感じてしまうかもしれない。
個人的には結構ヒットだったのでオススメですね。
ショーンオブザデッド系が好きな人は抑えておいても損はしないのではないだろうか。

 

 

 

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密宗威龍(日本未公開)

英語字幕と広東語字幕で観賞。
もちろん何となくしかわからん。
まあ香港ホラーは何となくで十分観れるからいいね。

これはジミー・ウォング(個人的にはウォンでよくね?と思う表記)製作の映画なので面白いと期待したりとかは欠片もしないで観賞。じゃあ何故観たのか?

ラム・チェンインが出てるから。

これだけ。でも出演者に関してはかなり良かった。
サモハン・キンポーを初め、チン・ガーロ、マン・ホイ、ウー・マ、タイ・ポーと個人的にはかなり好きな役者が思いのほか出演者している。
まあサモのチームの役者さんばかりだから当たり前なんだけどね。
まさか二記事目にこれを書くと思ってなかったけど今日たまたま観たので書いておかないと一生書かなそうだったので。

まあぶっちゃけた話、これをもう一回観るなら他の映画観た方がいい。

全体的に呪術がメインだったのでカンフーも少な目、というか最後は突きとか蹴りの動きで術使ってた。妙なサイキックバトルという印象。
最初に香港ホラーがどうちゃら言ったけどホラー感は皆無なのでこれはホラーではないかな。

密月とか密日は道士と紹介されてるんだけど、これは道士なのだろうか?
道士って道教の信奉者であって、この作品の宗教はタイトルからして完全に密教(密宗)、般若波羅蜜多と唱えるので大乗仏教だと思うんだよね。
道士=超常現象のエキスパートみたいな認識になっていたのかな。
もしくはラム・チェンインだから道士みたいな。

実はこれと同じ事は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でも感じた記憶がある。
奇しくも本作にも出演しているウー・マが道士として登場する作品なのだが呪文は「ハンニャハラミ」だったので、おいおいそれは仏教だろと小学生ながらに思った。
あと話の構成と役者さんはサモハンの映画「蜀山奇傅 天空の剣」にかなり似てるのでパクったんだろうなジミーって感じ。

まあこういう内容の無い映画の時に役者さんについてを細かく触れておこう。

ドラゴン(漢字が中国語なので英訳から):チン・ガーロウ
密月:ラム・チェンイン
迦衲大師:サモハン・キンポー
密日:ウー・マ
雲海:マン・ホイ
逆天童:ケニー・ロー
役名不明:タイ・ポー

オープニング止めながら確認したので多分合ってる。
ラム・チェンインとサモハン・キンポーはこのブログで何回も出るし有名だから今回はスルー。

錢嘉樂(チン・ガーロウ)
彼ははサモハンにスカウトされてサモハンの武術指導・スタントマングループ洪家班に入り、彼の映画で脇役をこなし「霊幻道士完結篇 最後の霊戦」で主演を勝ち取る。
ちなみにその映画はかなり好きなのでいずれは書くと思う。

なんというかそういう概要を知らないでも、若い頃のサモハンっぽいんだよねこの人。
顔はかなりイケメンで、段々丸くなっていくんだけど凄い動ける!みたいなスタイルがそっくり。
勝手な想像だけどかなり目をかけてもらってたんじゃないかなーと思う。

牛馬(ウー・マ)
初めて名前を知ったときはおかしかった!牛、馬でウーマ。日本語だと馬だけでええやん、ってなるね。
この人は本当に物凄い数の映画に出演してる。気づいたらいる、むしろ香港、台湾映画では欠かせない存在。
監督としても40本以上の作品を手掛けている凄い人。
前述の「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」をはじめ数々のジャッキー映画、サモハン製作の映画に出演。
俺が観たことある作品で出てないものの方が少なそう。
人間味溢れる演技が大変魅力的。
そういえばチンとは「霊幻道士 完結編」で主演同士。コンビの演技がかなり良い作品なのでいずれ。


孟海(マン・ホイ)
サモハンとは出身の京劇学校は違ったが同じくブルース・リーに目をかけられ、共に様々なことをブルース・リーから学んだとされる。
かわいらしい外見から友人役、弟子役がかなりハマる役者さん。
これも前述になる「天空の剣」に出演していた。
役者の絶対数が少ないのか俺の観る映画が片寄ってるせいで役者が被るのかいまいちわからないが大体どこかでぶつかるな。
たまたま昔、彼のことを調べたらその役者人生に感嘆を漏らしたものだ。

盧惠光(ケニー・ロー)
この人については調べてみたんだけど「ロウ・ホイクォン」の方が馴染みの名前だった。
ラオス生まれ、ジャッキーのスタントチーム成家班のエースで華麗な脚技に定評がある。
観たことある人が一番多いのは「酔拳2」だろう。
最後のボスの脚技の鋭さは忘れられないと思うがあれこそがケニー・ローの技のキレだ。
残念ながら今作ではショボいKISSの格好をしているので全く気づかれないと思うがジャッキーの映画にはめちゃくちゃ出ているので意識してみると面白いだろう。

太保(タイ・ポー)
ジャッキー映画の名脇役、ひょうきんな顔で明るい役が多い彼はジャッキー映画のユニークさを表現する上で必要不可欠。一瞬しか出ない作品もあるけどあ!タイ・ポーだ!って嬉しくなるもの。
サモハン、ジャッキーの映画に出演しているのだが実は二人より年上。

まあこんなところかな。今後この紹介した役者さんの出演している「面白い映画」を紹介していきたくなった!





以下ネタバレ

                                                                                                    • -

内容については、何か悪い妖術士的な逆天童が冒頭で復活。
いきなりタイ・ポー(役名わからんかった)が死、その死体をメッセンジャーにしてラム・チェイン演じる密月に挑戦状を送る。
そいつを退治する為に旅立つ密月。
途中チン演じる若者ドラゴンに弟子入りをせがまれたり、兄弟弟子?の密日と出会って喧嘩したりとしながら逆天童と対決。
そしてまさかの密月死亡!本当にジミーは主演として売り出す役を殺すなあ。

主役がドラゴンに代わり、仙人風のサモハン、迦衲大師に修行をつけてもらい強くなって逆天童を倒して終幕ザンス。
なんか印象に残ったシーンとかはないかな。
ボスの逆天童がクソしょぼいKISSのメイクみたいだなあとか、タイ・ポー一瞬で死んだ?!とかくらい。
あとラムさんの眉毛が霊幻道士以上に繋げられてた。
「天空の剣」も役者関連で思い出されたけど密教の衣装は「孔雀王」を思い出したな。勿論映画の方。


ちなみにこの映画のオープニングで真っ先にでかく紹介されるのは洪金寶。
つまりサモハン。
次にラムとウー。次あたりがチンね。

詐欺やんけ。

予告とかCMとかビデオのパッケージとかでの誇張はもはや文化レベルになっているから許せるが映画のオープニングは良くない。
サモハン目当てで観た人いたらキレるぞこれは。

そんな感じのどうしようもない作品だったので役者さんのファンで出来る限り観てみたい!って人だけ観たら良いでしょう。

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霊幻道士

このブログ作るにあたって、何を置いても紹介すると決めていたのがこの
霊幻道士」だ。

なぜか昔からキョンシー映画が大好きで、何が好きで見てるのかすら自分で解らないけどいまだにたまに観ていて、嫁から白い目で見られてる。


霊幻道士
サモ・ハン・キンポー制作のこの作品は恐らくキョンシー映画で最も有名であると言えるでしょう。
因みにあの有名なキョンシーの格好はサモ・ハン・キンポー制作、主演の映画
「鬼打鬼」が初出となる。これも当然観たのでいずれは紹介したい。

そもそも日本でのキョンシーという名称はこの霊幻道士で命名されたものであるので初代キョンシー映画と言って良いでしょう。

道士といえばこの人、林正英(ラム・チェンイン)
1997年に44歳の若さで肝臓癌でお亡くなりになっています。
はっきり言って泣いたね。
ブルース・リーにその才能を見いだされ、スタントから武術指導までブルース・リーから非常に大きな信頼を得ていたとの事。
その後サモ・ハン・キンポーのスタントチーム「洪家班」に加わり役者としても活躍し、この「霊幻道士」で一躍人気を博し、数々の映画に出演しました。
また本人もブルース・リーの弟子ということから詠春拳截拳道の達人であったとされています。
日本に来てるものはかなりの数観たとは思いますがいずれは未視聴のものを観ていきたい。
好きな中国人俳優で確実に五本の指に入れてしまう役者さんです。

このままラム氏の話をし続けても良いんだけど話を戻して「霊幻道士」の話をしよう。
実は俺がキョンシー映画で観た作品だとこれは三作品目にあたる。
なんでそんな事を覚えてるかというと、
当時キョンシーブームでテレビでもガンガン放送していたのだが我が家にVHSで保存されていたのは「幽幻道士2」、「霊幻道士2」の二本だったので最初に観たのは幽幻でしかもどっちも2という。

その頃から夢中になって何度も繰り返し観てきたのだが2ということは1があるに違いないと親にねだり、レンタルビデオ店でレンタルをしたのがこの作品となる。
なので三作品目のキョンシー映画というのは間違いないのだ。
ちなみに当時幼稚園児だった。

さて「霊幻道士
この作品は初代キョンシー映画なのにその後に数多作られるキョンシー映画と比べても完成度は極めて高い。

まず導入部が凄い。
棺とキョンシーが並んだ霊廟から始まり、弟子モンチョイがその手入れをしている。
キョンシーがゆらゆら動いているのを見て供えられている火を長くしたり、線香を夕飯として供えたり、骸骨に食べられたりとそう在ることが当たり前であるかのように様々な怪異が立て続けに起こっている。
その後でもう一人の弟子チュウサムが悪戯でキョンシーの真似をして、本物のキョンシーが動き出してしまう。
その暴走を師匠であるガウ道士と弟分の道士が治めにくる。

流れるように
「怪異が存在することが当たり前」
キョンシーは札がはずれると動き出す」
キョンシーの独特の動き」
キョンシーを制する道士がいる」
キョンシーを制する術は色々ある(鏡に弱い、血を額にあてると動きを止めるなど)」
といったことを開幕五分程度で済ませてしまう。

どんな映画なんだろうと探り探り観る必要がなく一発でこの霊幻道士の世界観に引きずり込まれる。

場面は移り、チェン道士は富豪ヤンに父親の墓を移す相談を受け、墓を掘り返すと父親の遺体は全く腐っていなかった。
強欲なヤンの父親は無茶な地上げで占い師の恨みを買っていて、間違った埋葬のされ方をしていた。
悪い気が溜まっていてこの遺体はキョンシーになるだろうとチェン道士は心配し、遺体を引き取ることにした。
しかし弟子の誤った処置により結局キョンシーとして蘇ってしまう……。

弟子がかなりアホという事は冒頭でわかってるし、こうなることは予定調和なんだけどその予定調和をきっちりと伝えられてる点でもキョンシー映画の中では優れていると言える。
この棺を掘り出す場面では墓地を騒がせてしまったお詫びに線香を供え、若くして亡くなった女性に同情し、チュウサムが女幽霊に好かれてしまうといった伏線も同時に張っている。
こんなに丁寧でテンポ良く話が進むって凄いことなんだよ、キョンシー映画では。

全体的にもホラー、コメディ、バトルのバランスが良い感じだし、何度観ても感心する。

道士役ラム・チェンインは当時32歳。
観てた当時は50前後の貫禄だったけど後続の映画でどんどん若返っていき幼い俺は非常に混乱させられた。
あと併せて日本語吹き替えの青野武さんのハマリ具合も絶対に抑えておかなくてはならない。

モンのリッキー・ホイ=古川登志夫さんも最高だし、チュウサムのチン・シウホウもイケメン、ティンティンのムーン・リーもこの時が一番可愛く、キャストを見た時にもこの作品はラムさんのワンマン映画ではなく、全体的に画面映えしていて実に良い。
道士がいて、弟子がいて、なんとなくヒロインっぽいのがいてっていう構図はキョンシー映画では定番だがどうしてもこの「霊幻道士」のメンバーが一番しっくりきて他が物足りなく感じてしまう。

そろそろ何を書いてるかよくわからなくなってきたのでまとめよう。
中国の世界観(法術や怪異が本当にありそうな)と香港映画らしい体術を上手く融合させ、所謂ゾンビ映画にはいないゾンビと戦う専門家を導入し、キョンシー映画という一つのジャンルを確立した本作品は紛れもない傑作である。
そして30年以上経った今でも繰り返し視聴しているキョンシー馬鹿がここに一人でもいる、それだけで凄まじい影響を後世に残していると言えるだろう。

俺はキョンシー映画を観るならこの「霊幻道士」を絶対に推す。というかこれだけ観れば結局それで良いまである。
さらにキョンシー映画というジャンルを掘り下げて色々みて!とは間違っても言わない。

初記事なんで長くなったけどこの辺で。
キョンシーについての詳しい話はいずれ。


霊幻道士 デジタル・リマスター版 〈日本語吹替収録版〉 [DVD]

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